I先生退官祝い

わたしがH大の研究生だったとき
お世話になったI教授が退官される。


国立も法人化されたので、
もう「退官」とは言わない。
「退職」が正しい。


が、あえて退官と言いたいんだけど・・・


本来3月にお辞めになるので、
そのころにお祝いをするのだが、
実は、I先生は
あと命、幾ばくもない。


したがって、この時期に行った。
先生はこの日(9/23)までは死ねないと思って、
生きてきたと言う。


これからも毎月でもお祝いをするという。
「それを目標に生きる」と言っていた。
目標を持って、それを一つずつ乗り越えて
生きていこうと思っている、と言っていた。


医者からは余命3ヶ月との宣告があった。
(とうに3ヶ月は超えている)


随分前だが癌で胃袋を全摘している。
今度は膵臓摘出。


温泉での宴会だった。
お風呂で見た教授はガンジーだった。


しかし、宴席のごちそうもたいらげ、
私の持って行った“秘蔵酒”も
おいしそうに飲まれて、よかった。
温泉にも入り、夜中まで語っていた。


強烈な生命力を感じた。


遺言も書き、現在ライフワークを仕上げている。


「胃を取ったときに、覚悟は出来ていた」
と言う。


こちらが対応の仕方に苦慮した。


「先生は死にませんよ」
と言いながら、
その日はいつか分からないが、
やっぱりお亡くなりになるんだろう。


宣告されて、なを、気丈に生きる、
そんな人を眼前にして、
ただただ、恐れ入るばかりだった。